慢性リンパ性白血病(CLL)患者さんの
体験談

  • 掲載している体験談は、個々の患者さんのご経験をインタビューした内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
  • 診断や治療などは当時のガイドライン等に基づいて行われております。
  • Dさん 40歳代 男性 無治療経過観察中

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    Dさん 40歳代 男性
    無治療経過観察中

前編

ようやく辿り着いた「慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫」という診断

1. 疲れやすさと首の腫れ。検査で悪性リンパ腫の疑い

私にとっての最初の異変は、体の疲れでした。仕事が終わって家に帰ってくるとすぐに就寝してしまい、12時間くらい寝ても全く疲れがとれなという状況が続くようになりました。

体の疲れが取れないことを自覚し始めたのと同じ頃に、首にシコリがあることに気付きました。自分でインターネットを使用して調べてみて、甲状腺の異常の可能性を疑いました。そこで、家の近くにある甲状腺の専門の先生がいるクリニックで血液検査を受けましたが異常はなく、「一時的にリンパ節が腫れたのだろう」と言われました。また花粉症で定期的に通院している耳鼻科の先生にも首のシコリを診てもらいましたが、「シコリが柔らかいからがんの可能性はない」と言われました。
1.	疲れやすさと首の腫れ。検査で悪性リンパ腫の疑い
耳鼻科を受診してから1年程経過後、持病の片頭痛がひどくなったため家の近くの脳神経外科がある病院を受診しました。首のシコリは変わらず残っていたので、もしかすると片頭痛と関係があるかもしれないと思い、先生に首のシコリのことも伝えました。先生からは「頭痛と関係があるかわからない」と言われたものの、首のシコリについても検査をすることになり、様々な検査を受けました。

エコー検査ではリンパ節の肥大を確認しましたが、一番大きいもので3 cmくらいあると言われました。検査技師の方は「こんなに大きなリンパ節は見たことがない」と驚いていました。さらに血液検査やCT、MRIといった検査を受けたところ、CT検査の結果から、お腹の中やわきの下などの全身のリンパ節が腫れていることが分かりました。検査結果から「悪性リンパ腫」という病気の可能性が高いと判断され、検査を受けた病院とは別の病院の血液内科を紹介していただきました。

悪性リンパ腫の可能性を踏まえて自分で色々調べたところ、抗癌剤で治療をする場合が多いことが分かりました。自分の仕事は体力勝負の仕事でもあるので、治療が開始したときに今まで通り仕事を続けられるか心配になりました。また当時は子供が大学受験に差し掛かるタイミングだったこともあり、子供の教育費についても心配でした。ただ自分の病気のせいで、子供が進路を変えるようなことはしてほしくないと思ったので、「必要があれば奨学金などの制度もあるから、今まで通り勉強を頑張って希望通りの大学に行って大丈夫」と伝えました。

2. 想定していなかった慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫という病名

紹介された病院の血液内科で検査を受けました。まずPET-CT検査を受けて、病気がどれくらい広がっているかを調べてもらったところ、首とわきの下、お腹の中、足の付け根などの体のいたるところに病変があり、悪性リンパ腫でいうとStage IIIに相当する結果でした。

その後に首の腫れている部分を手術で切り取って生検に出しました。生検の結果で確定診断がついたのですが、「慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫」であると伝えられました。慢性リンパ性白血病は血液中にがん細胞が出てくる病気で、小リンパ球性リンパ腫は、慢性リンパ性白血病と同じがん細胞がリンパ節に出てきてシコリをつくる病気ということでした。その上で自分の場合は、がん細胞がリンパ節に出てきてシコリを作る「小リンパ球性リンパ腫」に該当すると言われました。

脳神経外科で相談してから確定診断がつくまでに2,3カ月程度かかりました。慢性リンパ性白血病は血液検査で確定診断ができることが多いようなのですが、小リンパ球性リンパ腫では血液検査だけでは診断がつかないので、確定診断までに時間がかかったのだと考えています。

3. 経過観察という方針への不安からセカンドオピニオンを決意

自分は悪性リンパ腫で、抗がん剤治療を行うと思いこんでいたので、これから治療を頑張るぞという気持ちで先生の説明を聞いていました。ただ先生からは「現時点の方針としては経過観察で、病気が進行して悪くなったら分子標的薬というタイプの飲み薬で治療を始めましょう」と言われました。

自分が思い込んでいた「悪性リンパ腫」とは異なる病気だったものの、「小リンパ球性リンパ腫」も慢性リンパ性白血病の仲間との説明を受けたのと、白血病は抗癌剤で治る病気だと思っていた部分がありました。だからこそ「なおさら頑張って治療を受けなければ」という気持ちが高まっていたこともあり、経過観察という方針には納得がいきませんでした。

また病気や治療方針の説明の際に、主治医の先生がスマホで調べながら私に説明をしていたことから、「本当にわかっているのかな、あまり経験が多くないんじゃないかな」と心配になりました。
3.	経過観察という方針への不安からセカンドオピニオンを決意
経過観察という方針に納得がいかなかったのと、主治医の先生の説明時の様子から不安を感じたため、診断と治療方針の説明を受けてすぐにセカンドオピニオンを受けることを決めました。セカンドオピニオンではどこの病院を受診すればよいかわからなかったので、加入している保険会社の相談サービスを利用しました。治療経験がある先生が良いと思っていたところ、慢性リンパ性白血病の通院患者数の情報を教えてくれたので、自宅から比較的近いところで通院患者の多い病院でセカンドオピニオンを受けることとしました。

後編

続いていく経過観察、元気でいることを心がけて

1. セカンドオピニオンで経過観察の方針に納得。経過観察の開始へ

確定診断がついてから2カ月ほど経過後、保険会社の相談サービスを利用して見つけた病院でセカンドオピニオンを受けました。結果としては確定診断と同じく、経過観察で問題ないということでした。

ただ治療方針の説明の際に、治療を行わない理由も説明してくれたため、経過観察の方針に納得できました。「小リンパ球性リンパ腫を含む慢性リンパ性白血病は治る病気ではない。症状がない今から治療を始めた場合には、治療中に病気が悪化して本当に治療が必要になった時に、薬が効かなくなってしまう可能性があるため、今は経過観察の方がよい」と具体的に理由を説明してくれました。
確定診断を受けた病院に戻ってセカンドオピニオンの結果を伝えたところ、「現時点では治療を行うわけではないので、定期的な通院はしないで、腫れているリンパ節が大きくなるなど症状が悪くなったときにまた来院してほしい」と言われました。ただこれまで、色々な病院を受診してやっと確定診断がついた経緯があるので、継続的に病院に通っていないと、小リンパ球性リンパ腫が悪くなってから治療ができる病院を紹介してもらうまでに時間がかかってしまうのではないか?と思い、継続的に受診したい気持ちがありました。その気持ちを先生に伝えたところ、自宅に近い病院(確定診断を受けた病院でも、セカンドオピニオンを受けた病院でもない別の病院)であれば継続的に診察できるということだったので、自宅近くの病院を紹介いただきました。

現在は紹介された自宅近くの病院で、3ヶ月毎に血液検査と診察、半年に1回は骨髄検査とCT検査を受けています。シコリは少しずつ大きくなっているみたいで、お腹の中などに3 cmくらいの大きさのものが何個かあると言われていますが、現在も経過観察を続けています。
1.	セカンドオピニオンで経過観察の方針に納得。経過観察の開始へ

2. 日常生活の変化

病気が原因なのかわからないのですが、現在も疲れやすさは続いています。ただ疲れというのが血液検査とか数値で表されるようなものではないので、先生たちも小リンパ球性リンパ腫と直接関係があるかわからないようです。

また確定診断がついてから関節が突然腫れたことがありました。現在通院中の主治医の先生に相談したところ「関節に関しては整形外科で診てもらって」と言われ、整形外科を受診したら「血液の病気と関係があるかもしれない」と言われたこともありました。関節の腫れは徐々に良くなったのですが、珍しい病気を持っていることから症状の原因を調べることの妨げになってしまっているのかなと思っています。
免疫力低下の可能性もあるので、自分ではあまり意識しているわけではないのですが、感染症にかからないように注意するようになっているみたいです。例えば、病気と診断される前までは新型コロナウイルスは風邪の一種で大騒ぎするようなものではないと思っていて、流行状況などは全く気になっていなかったのですが、診断されてからはどうしても気になってしまいます。また砂埃が立つような場所での行動などは極力避けるようにしています。
2.	日常生活の変化

3. 治療開始後の金銭的な不安

現在は3ヶ月に1回の通院頻度で、CT検査や骨髄検査の時にはそれなりにお金がかかるので負担が全くないというわけではないですが、薬が処方されていないため金銭的には大きな負担にはなっていません。

一方で、治療が始まった場合の金銭的な負担については心配しています。薬は効いている限り飲み続けることなるので、高額療養費制度が使えるといっても上限額を毎月支払い続けるとなったら大変です。がん保険には入っていたのですが、入院や手術をした場合に給付金がもらえるという内容だったので、飲み薬で治療が始まっても給付金は出ないようです。

4. 自分で情報収集をすることの難しさ

日本では珍しい病気ということもあるのか、医師もあまり勉強が追い付いてないのかなと感じることがあります。そのため自分で知識を身につけなければならないと思っています。日本と比べて海外の方が患者数も多く、情報量も多いので、国内外の情報をインターネットを使用して調べていて、英語のウェブサイトを見ることもあります。ただ国外の情報は言語の違いもあり、信憑性を判断することが難しいです。

患者会にはオンラインで一度だけ参加しました。ただ慢性リンパ性白血病の患者さんの話が多く、自分に当てはまるような小リンパ球性リンパ腫に関する情報が少なかったことから、それ以来参加はしていません。

5. 慢性リンパ性白血病の方もしくはそのご家族の方に伝えたいメッセージ

慢性リンパ性白血病は進行が遅い病気なので、家族も含めて末永く付き合っていかなければならない病気だと思っています。それに加えて、病気があっても今のところは症状がなくて、周りから見てもわからないような状況なので、元気な時は自分が病気であることを気にしすぎず、元気に明るく生活することが大切だと思っています。