慢性リンパ性白血病(CLL)患者さんと
パートナーの妊娠・出産について

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慢性リンパ性白血病(CLL)は若い世代でかからないわけではありません。若い世代でがんになり、治療することになった方の悩みの一つが妊娠・出産です。このページでは、CLLの治療が妊娠に与える影響などについてご紹介します。

若い世代でも、CLLにかかることがある

CLLは、60歳以上に多い病気とされています1)。しかし、若い世代でかからないわけではありません。
若い世代でがんになり、治療をすることになった方の悩みの一つが、妊娠です。これは女性だけではなく、男性でも精子への影響を考えなければいけません。

CLLの治療は妊娠に影響を与えることも

CLLでは強い治療が選ばれることがありますが、その治療のためになかなか妊娠できなくなることがあります。具体的には、一部の薬物療法と放射線療法にそのリスクがあります2)(薬物療法、放射線療法の説明はこちら)。図では、CLLに用いられる可能性がある薬物療法と放射線療法(可能性が低いものも含む)についてまとめました2)

男性 女性
一部の薬物療法 薬剤の投与量によって、リスクは変わります
一部のアルキル化剤は精子がつくられにくくなるリスクがある 一部のアルキル化剤は無月経のリスクがある
放射線療法 照射量によって、リスクは変わります
全身、睾丸、頭蓋への放射線照射は、精子がつくられにくくなるリスクがある 全身、全腹部、骨盤への放射線照射は、無月経のリスクがある
一部の薬物療法と放射線療法の併用 薬剤の投与量、照射量によってリスクは変わります
精子がつくられにくくなるリスクが高まる 無月経のリスクが高まる

なお、薬物療法ではアルキル化剤の影響がよく知られていますが、他の薬剤で影響がないとは言い切れず、予測が難しいとされています3)

治療に入る前に、パートナーや医師と相談を

妊娠や出産を希望される方は、ぜひパートナーや医師(がん担当医師、不妊担当の医師)と相談してください。治療中にできることもありますが、治療前にできる対策があるので、治療前から相談するのがよいでしょう。
治療に入る前に、パートナーや医師と相談を

男性の場合の対策:精子凍結保存4)

男性の精子は凍結保存しておき、後々赤ちゃんがほしくなったときに保存した精子を使うことができます。治療前に精子を保存するのが一般的です。本人が受診できなくても、採取した精子を不妊クリニックに持ち込めば、凍結保存はできます。
なお、既に薬物療法で無精子症の状態になっている場合でも、手術で精巣内から精子を直接回収する方法もあります3)
男性の場合の対策:精子凍結保存

女性の場合の対策:凍結保存

女性のCLL患者さんの場合、卵巣組織または卵子を凍結保存します3)

女性の場合の対策:凍結保存

凍結保存の方法には、それぞれメリットとデメリットがあります3)

卵子凍結保存 胚凍結保存 卵巣組織凍結保存
利点
  • パートナーは必要ない
  • 最も確立した方法
  • 妊娠率が比較的高い
  • 月経周期に関係なくおこなうこと
    ができる
  • パートナーは必要ない
欠点
  • 妊娠率が胚と比較して低い
  • 採卵までに2~6週間かかることがある
  • 排卵誘発剤を使用すると女性ホルモン値が上昇する
  • パートナーが必要
  • 採卵までに2~6週間かかることがある
  • 排卵誘発剤を使用すると女性ホルモン値が上昇する
  • 妊娠率などの治療成績や安全性が確立していない
  • 手術が必要
  • 卵巣組織を移植する際にがんを一緒に移植してしまう可能性がある
卵子凍結保存 胚凍結保存 卵巣組織凍結保存
処置にかかる期間 2~6週間 2~6週間 1~3週間
パートナー 必要なし 必要あり 必要なし
妊娠率 胚より低い 比較的高い 研究段階
出産例 胚より少ない 多数 30例以上
注意点
  • 手術が必要
  • 使用時に卵巣に転移している
    がんを移植する可能性あり

対策については、医師に相談されるときの参考になれば幸いです。

  • 1) 病気がみえる vol. 5 血液 第2版, 東京, メディックメディア, 2017, p.182
  • 2) Levine J, et al. J Clin Oncol. 2010; 28(32): 4831-4841.
  • 3) 平成28年度厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班(研究代表:三善陽子).がん治療を開始するにあたって<抗がん剤編>.pp.5-7.http://www.j-sfp.org/ped/dl/cancer_treatment_brochure_f_jp_ver1.2.pdf [2024年1月29日アクセス]
  • 4) 日本がん・生殖医療学会(神田善伸著):造血器腫瘍(成人).http://www.j-sfp.org/disease/blood-adult.html [2024年1月29日アクセス]